ブロ本

2008/01/26

隣人A

まとまっている物が見てみたいとの声にお応えして・・・

隣人Aを1話から順に続けた物を作ってみました♪

それから!大変な事に、最終話(12話)ですが、大ミス

をしてしまいました。

書こうと思っていた部分を抜かしてしまったので、書き加

えて少し内容は変わっています。

加えた部分は赤色に変えてあるので、その辺も気になる

方は見てやって下さい!

皆さんごめんなさい。

                   隣人A

丁度1年程前、女性の多くがそうであるようにジューンブライド

と言う物に憧れていた洋子は、昨年6月結婚適齢期と一般に

呼ばれる25歳で尾鷲家に嫁ぎ、ここ調布に移り住んだ。

嫁ぐとは言っても、夫、高雄の実家は山梨なので、高雄と1年

程同棲していた洋子としては苗字を変え、住む場所が移った

程度の事である。

夫の高雄は小さな医療器具メーカーの役員をしていて、2人

の住んでるこの家は家賃の8割を会社が負担してくれるので、

洋子は同世代の結婚している友人よりは大分裕福な生活が

送れていた。

平凡な一般の家庭に育った洋子としては、収入の安定も、実

家の荻窪が近い事も、家賃のわりに大きなこの家も、そして、

役員である夫は時間に融通が利くので連れ出してくれる毎週

のデートにも満足していた。

満足はしていたが、趣味と言う趣味も元々無く、最近暇な時間

を持て余す様にもなっていた。

         6月29日

『ピーッピーッピーッ!バックします』

洋子が朝食を食卓に並べていると、高雄が起きてきた。

「何だよ今日は朝からやけにうるさいな」

「あら?言ってなかったっけ?大家さんに言われたんだけど、今

日お隣さんが引っ越してくるんだって」

高雄はトーストをかじりながら

「でもこんな朝早くからか?普通もうちょっと時間考えるだろ」

不機嫌そうな顔をする。

「まあまあ、高雄だってどうせこの時間に起きなきゃいけないん

だし、起こしてもらえて良かったじゃない」

洋子がなだめるが、まだ高雄は不服そうである。

『おい!しっかり押さえろよ!』

外から声がすると高雄は立ち上がり、イライラした様子でリビン

グの窓から隣を覗き込んだ。

「おい!おいおい!洋子!何だあれ?」

高雄が洋子に手招きする。

洋子も急いで窓から隣を覗いてみると、引越屋の作業員が大

きな仏像の様なものを2階に上げている。

「うわぁ、何あれ?手が6本もあるしなんか怖い」

「この間の人はいい人だったけど今度のお隣さんはどんな人な

んだろうな?」

高雄はもうさっきの怒りより、仏像の方の気を取られてしまった

様だ。

「あ!見て!あの作業員の人凄いおっきな熊の縫いぐるみ抱え

てる!子供もいるのねきっと」

「ああ・・・あ!まずい急がなきゃ!今日は会議があるんだった!

俺着替えて来る」

高雄はトーストをほおばると2階へ駆け上がり、急いで着替える

とそのままの流れで玄関へ走って行った。

「いってらっしゃい」

靴を履いている高雄に、洋子がいつもの様に声を掛けると

「ん」

高雄は頷いたが

「あ、そうだ!きっとお隣さん引っ越したって挨拶が来ると

思うから丁寧に挨拶しとけよ。隣とは上手くやっといた方が

いいからな」

思い立ったように洋子に伝える。

「わかった」

洋子が答えると高雄は

「あ~やばいやばい!」

言いながら急いで飛び出して行った。

洋子は高雄を見送ると、今日は特にやる事も無いので

だらだらと洗濯や掃除を始めた。

今日は、昨日やったので拭き掃除無しの掃除を終え、

2階のベランダで洗濯物を干しているともう11時近かっ

たがまだ隣は引越し作業中であった。

洋子は、朝見た仏像が気になっていたので「どんな人が

引っ越してくるんだろう?」と手を動かしながら作業を見て

いると、鏡台やタンスが運び込まれ、息子さんのであろう

か、サーフボードなどが運び込まれていく。

「おーしこれでラスト!」

他の作業員に声を掛け、トラックから荷物を受け取る作業

員の方を見た途端、洋子の手は止まり見入ってしまう。

その作業員が受け取っていたのは何故か便座。

それも3つも抱えている。

洋子が首を傾げて見ていると、その便座を持った作業員

が洋子を見上げ

「あ、どうも奥さん!ご迷惑お掛けしてま~す!」

と声を掛けてきた。

洋子は、盗む様にして作業を見ていた恥ずかしさからか

「いえ、どうも」

と言うと、急いで洗濯物を干し部屋に戻った。

そしてその後は、夕食の買い物がてらランチでもしようと

調布駅まで行き、買い物を済ませ家に戻ると、時々隣家

を気にしながらいつものワイドショーを見て、夕食の準備

をしていた。

夜になり高雄が帰って来ると、洋子は夕食を囲みながら

お決まりの様に1日あった事を報告する。

「やっぱり何かお隣さん変よ?」

「何が?」

高雄が聞き返すと、待ってましたとばかりに洋子の口が

滑らかに滑り出す。

「だってね、朝変な仏像見たでしょ?」

「ああ」

「それでね、気になって洗濯物干しながらお隣さん見て

たらね、別に他の物は変な物運んでなかったけど、何か

3つも便座運び込んでるの。便座よ?便座!おかしいと

思わない?」

「便座ってあのトイレの便座か?」

高雄は大して興味は無かったが、洋子に付き合い相槌

を打ってやった。

「そう、何か変なのよね。挨拶にも来ないし、朝から引越

しってのも何か普通じゃないわよねぇ。・・・夜逃げだった

りしたら朝に引越しなんてしないしね」

「当たり前だろ。夜逃げする人があんな目立つ時間に引

越しするはずないだろ?でも挨拶に来なかったのか・・・」

「うん」

「何か面倒臭そうな人が引っ越してきたな」

「そうね、ちょっと気持ち悪いけど明日会ったら声掛けて

見る。一応お隣になったんだし」

高雄は食事を終え、ソファーに座ると

「そうだな、一応挨拶くらいはした方がいい」

言いながらテレビを点けるとサッカー中継に夢中になっ

ていた。

                   6月30日

洋子は何だか今日も隣人の事が気に掛かっていた。

昨日越してきたはずの隣家は、まだやらなきゃならない作業

がある筈なのに、人の気配を感じない程静かであったし、昨

夜遅くから停まっている黒塗りの高そうなベンツも気になって

いた。

高雄は今日は土曜だったが、ゴルフだと言って朝早く出掛け

て行った。

洋子は、友人の杏子と新宿でランチの約束をしているので化

粧をしていると、隣家からドンドンと壁を叩くような音がする。

あ、やっぱりいるのね。そう思って気にせず手を動かしていた

が、良く聞いてみるとドンドンと言う音の他にうめき声の様な

叫び声の様な物が微かに混じって聞こえて来る。

洋子は気になりベランダの窓を開け隣を窺うが、カーテンが閉

まっていて中を窺い知る事は出来ない。

しかし、やはりうめき声の様な物は聞こえて来るし、壁を叩く

様な音もするので聞き耳を立てていると、少ししてピタッと音

は止んでしまった。

何なんだろう?とは思ったが、杏子との約束があるので、洋

子は急いで身支度を済ませ家を出た。

家を出て隣家の前を通る際、洋子は勿論、隣家の様子を窺う

様にして通ったが、まだ表札は無く名前も分からず、玄関脇

の駐車場には黒塗りのベンツが相変わらず置いてあるだけ

で、さっきのうめき声が幻聴であったかの様に静まり返って

いた。

洋子は新宿に向かう電車の中で、昨日越して来た不思議な

隣人の事を整理して考えてみようと思ったが、名前も分から

ないこんなに情報の少ない段階では、ただ、謎が深まるば

かりでまとまる筈が無かった。

そして洋子は杏子と会うと、ランチを摂りながら、そのまとま

らない考えを吐き出すように杏子にぶつけた。

「ね?何だか変なのよ、仏像やら、便座やら、高級外車が停

まってるかと思ったら、何だか変なうめき声みたいなのは聞

こえて来るし・・・しかも挨拶にも来ないのよ?普通引越しした

ら近所に挨拶回り位しない?」

杏子は3ヶ月後に出産を控えているその大きなお腹をさすり

ながら

「でも私もしてないかも」

と笑った。

「それは杏子が若いからよ、まだ会って無いから分からない

けど、きっとお隣さんいい歳よ」

「そうだよねぇ、仏像なんて若い人持ってないもんね。あ、も

しかしたら新興宗教とかかもよ?車ってベンツなんでしょ?

ああ言うのって結構儲かるんだって。うめき声みたいのとか

って念仏なんじゃないの?」

杏子が言うと

「あ!そうかもしれない」

洋子は納得した様に頷く。

しかしすぐに考え直し

「え?でもさ、じゃあ便座は?それじゃ便座3つも運んだ

意味が全然わからないじゃない」

と言うと

「そんな事私がわかる筈ないでしょうが。例えば・・・便座

マニアとか?・・・ってあんたのお隣さんでしょ?」

杏子は笑い飛ばす

その後話題は友人の恋愛話などに移りランチを終えると、

2人は今日の夕食は出来合いの物で済ませちゃおうとデ

パ地下で買い物をし、新宿駅で別れた。

洋子は調布駅で少し足りない物を買い足し家へ戻ったが

入れた筈の場所に鍵が無いので探していると、引越して

来た方の隣家から40前半から中頃だろうか?典型的な

中年太りのさえない男が出て来た。

白髪の混じった頭は、撫で付けるでもなく、起きたまま放

っぽらかしの様で、短パンによれたTシャツ、ゴムが伸びき

っているのだろうか?片方の靴下はずり下がっている。

洋子は挨拶をと思ったが、一瞬その風貌に見入ってしま

った。

洋子を気にする様子も無く洋子の家の前を通り過ぎよう

としたので、少しドキドキしたが、洋子はその男に声をか

けた。

「あ・・・あの、どうも隣の尾鷲です」

洋子が言うと、男は振り向いた。

「・・・どうも」

「昨日越して来られたんですよね?」

聞くが、男は洋子の目も見ず

「・・・はあ」

と答えるだけだった。

やっぱり何か変。と思ったが、危険そうな雰囲気は無い

ので、元々の昨日からの興味も手伝って洋子は

「あ、まだ表札が出てなかったのでなんてお呼びしたら・

・・」

と続けた。

男は特に面倒臭そうな表情も見せず、かと言って積極的

に答えるでもなく

「・・・ああ、川名です」

ボソッと答える。

洋子は、人の目を見ず話し、自信虚ろな目をしたこの男を

見て、益々この川名と言う男がどんな人間だか分からなく

なって来る様だった。

ただ、何かしらおかしな物を持っていると言う事だけは、洋

子の中で確信に近い物になっていた。

相変わらずこの川名と言う男は、焦点の会わない様な目の

ままボーっと突っ立っている。

洋子は昨日から気になっている事を聞いてみた。

「あ、あの・・・昨日失礼だとは思ったんですが、引越し作業

を見ていたら、引越屋さんのお兄さんが便座を3つも持って

たんですけど何に使うんですか?あ、すみません、わざわざ

見ようと思ったわけではなくて、目に入っちゃったもんです

から」

洋子の心臓は、心音が相手に聞かれてしまうんではないか

と言うほど脈打っていた。

それはそうだ、初対面の人間に対してする質問ではない。

勿論、それは洋子にも分かっていたが、昨日から目の前に

餌を置かれ『お預け』をされた犬の様になっていた洋子とし

てはいけないと思いながらもそこの制御が利かなかった。

「・・・・・・え?何でしょう?」

しかしこの川名と言う男聞いていなかった。

まさかこんな答えが返って来るとは思わないから洋子は

一瞬たじろいだが

「え、いや、あの、だから昨日お宅に便座が3つも運び込

まれたのが気になっちゃいまして」

気持ちを振り絞り再び聞いてみた。

「・・・ああ、あれはウォシュレットと言う便座の1番最

初の型なんです。良く出来てますあれは」

川名は相変わらずの表情のまま答えた。

しかし、今まで喰らいついて会話をして来た洋子の気持

ちは萎えてしまう。

何だか全ての感情の反応の遅いこの川名と言う男にイ

ライラして来てもいた。

「はぁ、そうですか」

そう言うと洋子は丁寧に挨拶をして家に入った。

洋子は家に入り、夕食の準備に取り掛かったが、自分

で話しを打ち切ったとは言え、やはりあの川名と言う男

が気になってしょうがなかった。

他の家族はどんな人達なのだろうか?

やはり、新興の宗教などに関係があるのだろうか?

ウォシュレットの1番最初の型・・・しかも3つ。やっぱり

杏子の言う通り便座マニアなのかしら?

結局、名前以外は何もはっきり分かっていない。

これから隣人としてやって行かなければならない洋子

としては、考えれば考える程頭がこんがらかる様であった。

夜の7時少し前に高雄が帰宅すると、洋子は高雄にシ

ャワーを浴びる隙も与えずに、今日1日あった事、勿論

川名と言う隣人の事を中心に報告したが、高雄は高雄

で、今日のゴルフでベストに近いスコアを出した事の方

に頭が行っている様であまり聞いていないのが、洋子に

は少し不満だった。

食事中も洋子の話しは続いたが、高雄は朝早く疲れて

いて生返事を繰り返すだけだった。

食事をサッサと済ませて、テレビを少し見ると

「じゃあ明日はデートだから、いつもの10時半で良い

よな?」

そう言って高雄は寝室に入ってしまった。

その後洋子は、いつもならこの時間高雄に占領されて

いて見れないテレビ番組を見ながら夕食の片付けをす

ると、シャワーを浴び、隣人や高雄の態度に釈然としな

い物を感じながらも、いつもより少し早目に床についた。

                   7月1日

デートの日、2人は11時頃に車に乗り込んだ。

隣家の前を通る際、隣家に車が停まってないのが洋子は

少し気になったが、それよりも買いたかった洋服を今日買

える事の方に気持ちを占領されていて、いつもの様に気

になる事はなかった。

高雄は車に乗るなり、最近ハマリ始めたジャズのベスト版

のCDをかけ始める。

そのCDが9曲目を終える頃車は渋谷に着き、高雄は車を

停めると、2人で良く行くガレットの店に行き昼食をとり

、食べ終えると高雄の欲しがっていたデジカメを見る為

に大型家電量販店へ向かった。

店に着き、カメラのあるフロアーに来ると

「ちょっと見てくる」

といって高雄はカメラを見に行ってしまった。

洋子は特に欲しい物が無かったのでフラフラと店内を見

ていると

「あぁ駄目だ、駄目、新宿店にしかないんだってさ」

言いながら高雄が戻って来た。

よっぽど欲しかったのだろう、肩を落としている高雄を見て

「じゃあ、新宿行こうよ」

言った洋子の一言で2人は再び車中の人となる。

「ねぇでもさ、そう言うのって秋葉原とか行った方が安く

なってるんじゃないの?洋服は来週でも良いよ」

助手席で洋子が言うと

「いいよ、そんな気使うなって、新宿には必ずあるんだか

らさ、値段だってそんなに変わんないよ」

言って、高雄は車を表参道に入れると、洋子の行きたが

っていた店の手前のワクが空いていたので、車を寄せ

停めた。

高雄が車を降りようとすると

「ねえ、ちょっと!ちょっと!待ってほら!」

洋子が通りを指差し止めるので

「何だよ」

高雄はドアを再び閉め洋子の指差す方向を見た。

「あ、何?」

「あれ!あれがお隣さん」

高級ブランド店の中で、体型こそ中年独特でずんぐりむ

っくりしていたが、こざっぱりとした格好の中年の男が、

女性物のハンドバッグを買っていた。

「えぇ?でも別にお前が言ってたみたいにみすぼらしい

感じじゃないじゃないか?人違いじゃないの?」

「だって、昨日の今日で見間違える筈無いじゃない。

ほら見てよ!ね?何かボーっとした感じでしょ?」

「ああ、まあ・・・そうかもしれないけどまあ、別に今

日はそんな事良いよ、ほら行こう」

高雄が言うと、洋子は気にはなるようだったが車を出た。

店の中でも、洋子は

「でも、さっきのバッグって若い子に流行ってるヤツよ?

娘さんのかしら?」

高雄に隣人の事を、ああやかやと話していたが、高雄

は大した興味も見せず、目当ての夏物のワンピースを

買うと車に戻り、新宿へと車を走らせた。

車内ではもう洋子も、欲しかった服を手にした事で頭

から川名の事は離れていた様で

「デジカメ買ったらどこで食事にしようか?」

などと話している。

新宿に着き、歌舞伎町のパーキングに車を停め、

車を出ると2人は電気店の方へ・・・と思ったが

「高雄デジカメ見るんでしょ?私ちょっとその辺見て

ていい?」

洋子が言うので

「じゃあ、40分後に駐車場で待ち合わせな?必ず戻

って来いよ」

と言うと高雄は電気店の方に独り歩いて行った。

洋子はコンビニの方をちらちらと伺いながら高雄が見え

なくなると、急いで近くにあったコンビニを覗ける物陰に

隠れた。

少しすると手にブランド店の手提げを提げた男がコンビ

ニから出て来る。

気の抜けたような歩き方と言い、虚ろな目といい、間

違いなく川名である。

やっぱりさっきの川名さんじゃない。

洋子はいけないと思いながらも興味の方が先に立ち

少し距離を置いて川名の後を追った。

洋子はドキドキしながら、時々見付からない様に物

陰に隠れたりして附けていたが、日常特に趣味も無く

平均、人並みと言う枠から外れた事の無いような洋子

は、この探偵の様なスリル感に少し酔い始めていた。

10分程歩いただろうか、洋子は細心の注意を払って

追いかけていたつもりだったが、川名がラブホテルのあ

る角を曲がった所で見失ってしまった。

しまった!と思い辺りを見まわしてみたが、やはり川

名はいない。

それまでは勢いで来てしまったが、洋子は急に自分が

追跡していた事が気付かれていたんじゃないかと言

う恐怖に襲われ、急いでその場から離れ車に戻った。

洋子が駐車場に戻ると、高雄は買い物に時間がかか

った様で、少し遅れて戻って来た。

「あったあった、新宿にもあと6個しかなかったんだって

さ、よかった~あぶねぇ」

嬉しそうな高雄はすぐに車を出さず、車中で一通り

カメラをいじると

「さっき買い物しながら考えてたんだけどさ、お台

場とかって最近行ってないから行ってみない?

ほら、結婚する前に良く行ってた店とかどうかなと

思って」

言い車を出すと、台場方面に走らせた。

高雄は上機嫌だが洋子は車中、居心地が良くなかった。

勿論、高雄には川名を追跡していた事は話せないし、

その為何をしていたかアリバイも作らなきゃいけなかった。

川名に気付かれていたらどうしようと言う思いもあった。

お台場は、日曜と言う事もあって結構人が多かった。

結婚前に良く行っていたイタリアンの店は、予約を

入れていなかったので少し待たされたが、食事を終

え店を出る8時半頃には人気もまばらになっていた。

店を出ると

「じゃあさ、デートの締めにこのカメラの1枚目、観覧

車バックで撮らない?」

洋子にしてみれば結構恥ずかしい提案ではあったが

、食事をしながらずっとカメラの説明書をながめていた

のも見てるし、新宿で川名を追ってから、いまいち気持

ちが晴れないので、高雄のテンションに便乗し提案に

乗る事にした。

「でもさぁ、観覧車バックにって、観覧車まで行ったら

撮れないんじゃないの?」

歩きながら洋子が言うと

「あ、そうか!でもまあ、それなら乗っちゃって夜景バ

ックってのも良いんじゃないか?もう歩いてきちゃた

んだし」

洋子としては、それならまだ人目も気にしないで良い

と思い、カメラをいじりながら歩く高雄に着いて行く。

観覧車の下に着くと

「ああ、やっぱりこれじゃあどう考えても無理だな」

レンズを覘きながら高雄がつぶやく。

「じゃあ乗っちゃう?」

洋子に言われ、高雄はレンズを観覧車の乗り口に

向けた。

「あ、お隣さん!」

「え?」

「ほら、今乗り込んでった人絶対そうだ!」

高雄の一言に急に洋子の心音が早くなる

「ちょちょちょっと」

と洋子は高雄の袖を引き隣接するアミューズメントパ

ークの入り口の陰に隠れる。

「何だよ別に隠れる事ないだろ?」

高雄はちょっとむくれた様だったが

「本当に川名さんだった?」

何故か小さい声で洋子が聞き

「だって今日見ただろ?絶対そうだよ」

高雄が答えると、洋子の頭の中で一斉に色んな

事が走り回る。

3回も街で出会う事があるだろうか?

もし、さっきの事が気付かれていて高雄の耳に入

ったらどうしようか?

いや、それよりもさっき自分が追跡していたのも、

実は逆だったんじゃないだろうか?

もしかしたら、実は今まで私達が観察されてたん

じゃないだろうか?

しかし、高雄は洋子の気も知らず

「・・・でも街で同じ人2回見かけるだけでも不思議な

のに、やっぱりあの人変わってるんだな、1人であの

歳の人が観覧車乗るか?ふつう」

と楽しそうに話している。

洋子は、高雄に生返事を繰り返し、色々考えてみた

が確かめてみるしかないと思い

「本当に川名さんだった?」

もう一度高雄に聞くと

「本当だって!お前もしつこいな、じゃあ出口にいたら

分かるから見ててみればいいだろ?」

と言うので出口の見える所まで行き物陰から覗き込んだ。

5分程見ていただろうか、しかし川名は降りて来なかった。

中年の男すら降りて来ない。

「もう降りちゃったのかな?」

高雄が言うと、洋子は辺りから川名が自分を見ているよう

な気がして来た。

そして、2人は写真を撮る事も忘れ、帰宅の途についた。

                   7月2日

「洋子ちゃん、ちょっとちょっと!」

洋子が玄関前で掃き掃除をしていると、向かいに住む

片山三春が声をかけてくる。

彼女は50代前半で体格にも貫禄があり、ここに住ん

で長い事から、近所の奥さん連中のボスの様な存在

である。

「あ、おはようございます。何ですか?」

洋子が手を止めると、片山が寄って来て

「洋子ちゃんは今日は予定は?」

と聞いてきたので

「いえ何も・・・」

内心、また面倒な事を頼まれたら嫌だなとは思った

が、実際予定と言う予定は無いのでそう答えた。

「あら、良かった、じゃあ今日2時から近所の奥さん

達と家でお茶するからいらっしゃいよ」

と言うと、片山は洋子の耳元に口を寄せて

「ほら、あなたのお隣の川名さん、少し変じゃない?

こう言う時に奥さん連中がしっかり結束しないとね。

変な人だったりしたら私達でなんとかしなきゃいけな

いでしょ?」

言い終えると、小走りに家に戻って行った。

洋子はまだ「はい」とも「行きます」とも行ってなかった

が参加と言う事になってしまった様である。

しかし川名と聞き、洋子も少し積極的な気持ちになった。

洋子は昼食を簡単に済ませると、義父の送ってきた折り

詰めを手に午後2時丁度に片山の家へ向かった。

片山の家に上がり、リビングに入ると、もう皆そろってお

茶を始めていた。

参加者を川名の家を中心にして見ると、まず向かいの

横山さん、斜め向かいの高岡さん、そして、高岡さんと

反対側斜め向かいの今回の主催者片山さん、洋子の

家から川名の家と反対側向こう4件目の三井さん、そ

して洋子が集まっている。

「あらぁ、洋子ちゃん早く座りなさい。ほら、お菓子もあ

るからどうぞ」

三井は自分の家でもないのに、勝手に台所に入りお

茶を出して来る。

「あ、これこの間義父が送って来た物で、お口に合う

か分かりませんが・・・」

洋子が折り詰めの菓子を差し出すと

「あらぁ、気を使わないでいいのよ若いんだから」

四重奏の様に皆が言う。

そして、一番若手の洋子が皆に気を使いながら席に

つくと、せっかちな片山は早速話し始めた。

「あのね、皆もう何で集まったかは分かってると思う

けど、川名さんの事。あの人がまだどんな人か分か

らないじゃない?で、おかしな人だったら私達が協力

し合わなきゃいけないと思って集まってもらったのよ」

「そうよね、何だか来た日から挨拶もないし、変な人

だったら困るわぁ。それにさ、私や片山さんの子供は

もう大きいから良いけど、高岡さんと横山さんのお子

さんはまだ小さいでしょ?私それが心配なの」

三井が言うと

「そうなんです、私もそれが心配で・・・」

と高岡が話す横で横山が頷いている。

「で、とりあえず今日は皆さん持っている情報を交

換しようと思った訳。洋子ちゃんなんかはお隣なん

だし色々分かった事あるんじゃない?」

片山に聞かれ、洋子は勿論昨日の事は話さなか

ったが、仏像の事、便座の事、川名の家からうめ

き声の様なものが聞こえたが、それは念仏じゃない

かと思っている事などを話した。

「ああ、やっぱりあの仏像はおかしいわよね。うん念

仏の線はあるかもしれない」

片山は刑事のような口調であった。

「そうそう、それに何だか壁を叩く様な音もしなかった

?」

「あ!しました、しました」

高岡が聞いてきたので洋子は答える。

「この中に川名さんと話した人っているのかしら?」

三井が皆に聞いてきたので、片山、横山、そして洋

子が手を挙げる。

「あ、でも私はただ挨拶しただけよ。洋子ちゃんと横

山さんは何か聞いた?」

「えっと、私は何だか目は虚ろそうだけど、危なそう

な雰囲気は無かったって事と、持ち込んだ便座が

ウォシュレットの1番最初の型って事位ですかね」

「なによ~そのウォシュレットの1番最初のって」

三井が洋子に言うが、洋子自身意味が全く分か

らなかったので、いや話が噛み合わなくってと言

って話しが終わってしまう。

「横山さんは?」

片山が再び仕切ると

「あの、私は便座って見てないんで分からないで

すけど、川名さんに挨拶した時丁度主人が一緒で

、何か仕事の話してたのでもしかしたら・・・」

「え?何だったの?奥さんとかもいらした?」

自分から仕切ったのに片山は、横山が話しを終え

る前に矢継ぎ早に質問する。

「いや、奥さんは居なかったですけど、仕事は内

装業とかって言ってたので、もしかしたら便座って

言うのはそう言う事が関係あるのかなと・・・」

「でも、デザインが良いとか言ってましたよ?」

洋子が言うと

「そうよねぇ、いくら内装業だからって普通は便座な

んて3つも持ち込まないわよ?」

三井が言った。

片山は頷き

「今日になってまだ他の家族に誰も会ってないって

言うのもおかしいし、もし変な宗教だったりしたら大

変な事よ?これは少し観察してみたほうが良いわ

ね」

と言うと皆も頷いているので

「じゃあ、皆でだと怪しまれるだろうから、お隣だし

最初の内は洋子ちゃんそれとなく観察してみてくれ

るかしら」

と洋子を見た。

少しためらう物はあったが、昨日の事もあるので洋

子は引き受ける事にした。

「そうですね、一応皆も眼を配って、また時々こうや

って意見交換出来たら何か分かって来るかもしれな

いですし」

高岡が言うと、では洋子ちゃんが何か新しい事を掴

んだ時点で集まろうと言う事になり、夕食の買い物

があるので解散と言う事になる。

洋子は『片山達に頼まれた』と言う事で責任が分散

され、昨日までより少し隣を伺うと言う事に対しての

罪悪感と言うハードルが低くなったような気がしていた。

                   7月3日

昨日奥さん達とあんな話になってしまったが、実際隣を

覘いてみようとなると、洋子は何から始めたら良いのか

分からないまま昼を回ってしまった。

川名の家は朝から人の出入りは無かったように思うが、

リビングや2階の寝室から覘いてみても、部屋は暗く中

の様子は分からなかった。

先日買った高雄のカメラを、とも思ったが壊してしまった

ら後々面倒なので諦める。

監視カメラを設置したら、などとも思ったが、まさか高雄

に隣を覘いていると言う事を知られる訳にもいかないの

でこれも止め、洋子は調布駅にあるデパートに行き3千

円程の簡単な双眼鏡を買って来た。

奥さん達に頼まれたとはいえ、いざ双眼鏡などを使って

覘くとなると勇気のいるもので、洋子は少しの間双眼鏡

を前に考え込んだが、結局興味の方が勝ち、恐る恐るリ

ビングから隣家を覘き出した。

覘いてみると、おもちゃの様なこの双眼鏡が良く見える。

室内が暗いのと、隣家との間に生える木々が邪魔をし、

細かい所までは分からないが、覘いた場所はリビング

で、引っ越して6日も経つのにまだ部屋はダンボールだ

らけで人気も無かった。

2階にいるのかしら?

そう思い、洋子は寝室へ向かう。

やはり、いや特に日本人と言うのは他人の生活や行動

に異常なほど興味がある。

洋子も例に漏れず、覘き始めると最初の良心の呵責な

どは何処かに行ってしまった様で、寝室に入るなり再び

隣家を覘いた。

先日は閉まっていて洋子のお目当ての物を見せてくれ

なかったカーテンも今日は開いている。

やはり、2階もダンボールだらけであったが、覘いたその

部屋には引越しの時に運び込まれた仏像が不気味にデ

ンと置かれている。

しかしここにも人は居ない。

洋子の家から川名の家を覘ける場所はリビングと寝室し

かない。

どうしよう?と考えていると、川名の家の玄関の方で声が

聞こえて来た様に思ったので洋子は寝室のベランダから

覘き見てみる。

すると、良くは見えなかったが人が入って行く。

洋子は急いで1階のリビングに戻り向かいの部屋を覘い

たが、ここには入って来ていない様だったので再び2階へ

戻った。

しかし、仏像の部屋にも人気は無い。

洋子は、私何してるんだろう?とも思ったが、何だか肩透

かしを喰らった様でもあって少しイライラしていた。

仕方ないので、その内来るだろうと寝室に居座り、仏像の

部屋を窺う事にした。

30分程であろうか?飽きてきて洋子がウトウトし始めた頃

に仏像の部屋に明かりが点く。

急いで双眼鏡で覗き込むと、洋子は一気に目が覚めた。

川名がセーラー服を着た女の子の肩を抱いているのである。

そして、女の子の方も川名の胸に顔を埋めている。

洋子は流石にこれは見てはいけないと思い一端部屋を出た。

いけない物を見てしまったという罪悪感もあったが、他人

の秘密を見た快感からだろう、洋子の心臓は高鳴っていた。

衝撃的な光景に面食らい部屋の前で洋子は暫し佇んでいた

が、もう一度確かめようと寝室のドアを開ける。

しかし、仏像のあった部屋のカーテンは閉じられていた。

                   7月4日

洋子は高雄を見送ると、午前中の内に夕食の買い物を

済ませて来た。

今日は腰を据えて川名を観察するつもりでいたからだ。

洋子は、高雄に分からないようにキッチンに隠しておい

た双眼鏡を手に取るとまずリビングから、そして2階の

寝室から隣家を覘いてみた。

しかし、もう11時を回ろうと言うのにまだ川名の家のカ

ーテンは閉じている。

さてどうしよう?考えてみたが、相手が動かなくては手

の打ち様も無いので、洋子は隣家を気にしながら掃除を

始め、洗濯物を回した。

洗濯物の脱水が終わってもまだカーテンが開かないの

で、洋子は一計を講じる。

洋子は寝室のベランダへ洗濯物を運び干すと、最後の

一枚を川名の家の敷地内へ落とした。

そして「あら?」とわざとらしい顔をしながら階段を降りる

と、家を出て川名の玄関前に立った。

少し緊張したが、洋子はもうそれよりも興味が勝ってし

まっている。

チャイムを鳴らし、寝ぼけた様な声で対応してきた川名

に事情を説明し待った。

玄関が開くと、寝癖そのままの川名が出てきた。

洋子の狙いは、この隙に家の中を覘く事にあったので

「どこら辺に落としました」

川名が聞いてきて

「あ、裏庭の方です」

答えたが洋子の意識はずっと玄関の奥にあった。

しかし、残念な事にこの作戦は洋子の興味を満たす物は

提供してくれなかった。

リビング同様目に入ってくるのは、ダンボールの積み重な

った物だけだった。

そして、川名に促され裏庭に行き洗濯物を拾うと、洋子は

礼を言い家に戻った。

家に戻ると、もう手は無いのでひたすら監視である。

洋子のチャイムで起きたのだろう、川名の家のカーテンは

開いていたが、洋子が時々双眼鏡で覘いてみても川名は

仏像のある部屋でぼーっと本を読んでいるだけだった。

洋子は寝室を窺いながら色々と考えてみた。

横山に内装業と聞いたが引っ越してきてから働いている様

子は無く、引越しの時は家族の物であろう鏡台やサーフボ

ードなどが運び込まれていたのに、家族の顔を1度も見た

事がない、昨日の女子学生とはどんな関係なのかも分か

らず仕舞いであった。

高雄とのデートの日に感じた、川名が逆に洋子を監視して

いると言う事は無さそうであったが、宗教関係かもしれな

いと言う疑いもまだ洋子の中では拭えていなかった。

洋子は考えれば考える程、何者なのかははっきりしな

ければならないと思った。

再び川名の部屋を双眼鏡で覘くと、川名がベランダに

出て洗濯物を干していた。

洋子は目が合ってしまうと思い、慌てて部屋を出たが、

もしかしたら洗濯物を見れば家族の事が分かるかもし

れないと思い『ガラガラガラ』と言う窓の閉まった音を確

認すると再び寝室に戻った。

そして、洋子の見たそれは

男物のジャージ上下、そして下着が3枚。

バスタオル2枚に、セーラー服だった。

洋子の疑問と謎は更に深まる・・・

                  7月5日

しとしと雨が降っている。

洋子は少し小降りになったのを見計らい家を出ると、丁度

郵便配達のバイクが走って来た。

「あ、奥さんですか?今日の分です」

配達員のお兄さんに手紙を渡され、洋子は一旦家に戻る。

そして、手紙を靴箱の上に置いた途端、洋子は思いついた

ように玄関を飛び出し、川名の家に車があるかを確認した。

が、無い。

と、言う事は川名は外出したのだろう。

洋子は周囲を見渡し、近所の人間が居ないのを確認す

ると、周囲に気を配りながら川名の家の前まで来た。

ドキドキしていた。

こんな事を自分がする人間だとは今でも思っていない

が、洋子の手は自分の思いとは裏腹に、川名の家の

郵便受けに入っていた。

洋子は、手に取った数枚の手紙の内容も確かめずに

家に走り戻ると、リビングのカーテンを閉じ、机に手紙

を並べる。

葉書1枚。

封書が1枚と、ダイレクトメールを持って来た様である。

全てに川名陽二と書かれているので、あのボサボサ

頭の隣人は陽二と言う名前なのだろう。

ダイレクトメールは、まあタイミング良く家具店のセー

ルかなんかの物であった。

洋子は葉書と封書を見つめていたが、まず葉書を手

に取り読み始めた。

『先日は素敵なバッグをありがとうございました。

私の方はもう気持ちの清算は出来ているので、もうお

気遣い無いように。

あなたのせいだなどとは思っておりません。

                         野口 順子』

裏を返すと、差出人は新宿区歌舞伎町となっている。

そして、封書を手に取ったが、流石に洋子もこれを開け

るのはためらった。

しかし、ここまで来て見ない筈も無く、洋子は台所に濡

れ布巾を取りに行くと、糊付けされた部分を軽く湿らせ

ゆっくりと開封した。

洋子の鼓動は再び高まる。

平々凡々と暮らしてきた洋子にとって、こんなスリリング

な展開は無かったといって良いだろう。

誰に見られている訳でもないのに、洋子は部屋を見回し

手紙を読み始める。

『陽二へ

引っ越したと聞いた

達雄は新しい小学校で馴染めているだろうか。

美子は新しい環境で元気にやっているだろうか。

奥方も、引越し作業疲れただろう、いたわってあげなさ

いよ。

お前も働き盛り、良い歳だとは思うが父さんの様に

家族を省みない様ではいけない。

引越しを機に、しっかりと地に足をつけて家族孝行に

励むように。

                           父より』

毛筆で力無く書かれていた。

多分、達雄と言うのが川名の息子で、美子と言うのが

娘なのだろう。

そして、奥さんが居るという事は、4人家族だと言う事と

、手紙の差出人が山梨に住んでいる川名の父親である

事は分かった。

歌舞伎町の野口と言うのは、以前川名を新宿で見失っ

た時に川名が訪れた場所だろう。

洋子は、2つの手紙の内容と、今自分が持っている川

名の情報を照らし合わせ、葉書の送り主野口と言う女

性と、川名の間に何かあるのではないかと考えた。

そして、家族が未だ調布に移り住んでいない理由もそ

こにあると考えると、事の流れがスムーズなのではな

ないか、とも思った。

夜になり、高雄が家に戻ると、洋子は昼間の手紙の

事はおくびにも出さず、いつもの様に振舞った。

しかし、煮詰まってきた洋子の頭の中は、明日はど

うしようかと言う事で一杯であった。

                  7月5日

洋子は新宿に向かう電車の中に居た。

無論、鞄の中には野口が川名に宛てた手紙が入っている。

本来なら、この手紙は川名に渡すのが当然であるが、家に

居ないので届けたと言う事にし、そこから少しでも川名の事

を聞ければ・・・と洋子の中でシミュレーションは出来ていた。

洋子は新宿駅に着くと東口に出、傘の波を抜けて歌舞伎

町へ向かった。

新宿の地理に詳しくない洋子は、以前川名を追跡した時に

あったコンビニを探したが見付からず、キョロキョロしながら

歩いていた。

「あ、お姉さんどこか探してたりします?」

ナンパだろう若い男が声をかけてくる。

「僕、一緒に探してあげますよ?」

「お姉さん何処から来たんですか?」

少ししつこいので逃げるようにしてその男の子から離れ

ると、洋子は偶然見覚えのあるラブホテルの前に居た。

洋子は葉書を見て、ホテルの隣が野口の住むマンション

である事を確かめると、大きく息を吸い込み2階へ上がった。

古い建物である。

近隣の建物も密集しているので日当たりも悪そうでジメジメ

していた。

緊張しながら洋子が玄関のチャイムを鳴らすと

「はい、どなた?」

少し年配の女性の声が返ってきた。

「あ・・・あの川名さんの隣に住んでる者ですが・・・」

洋子が言うと、扉の向こうからあからさまにトーンの落ちた

「はい」

と言う声が聞こえる。

扉を開け出てきた女性は案の定、怪訝そうな顔をしていた。

歳は川名と同じ位であろうか?

これから出かけるらしく化粧は濃く、若作りに必死なのはその

化粧を見てもすぐに分かる。

洋子はサッと手紙を差し出し

「あの、私の家に誤配されまして・・・で、今日川名さんが

お留守の様なので、失礼だと思ったんですが住所見たら

歌舞伎町なので・・・で、今日丁度新宿に来る予定があっ

たので届けに・・・」

たどたどしくはなってしまったが、一応シミュレーション通

りに言葉は繋いだ。

「あらそれは、あ、じゃあ内容も読まれちゃってるわね。

汚い字で恥ずかしいわ。わざわざありがとうございます」

言いながら野口が扉を閉めようとしたので、洋子は

「・・・あの」

呼び止めた。

「あの、川名さん引っ越されてから家族の方いらっしゃら

ない様なんですが、何か知ってらっしゃいますか?・・・何

か元気が無さそうなので心配で・・・」

洋子は川名を気遣うように言ったが

「・・・・・・・手紙ありがとうございました」

野口は何も答えずに扉を閉めた。

洋子は仕方なく帰りの途についた。

しかし、あれ位の会話は近所の奥さん達とも良くする様

な内容である。

しかも、わざわざ手紙を持って来た人間に、普通あんな態

度をとるだろうか?

洋子は、野口の態度もそうだが、新宿まで来て何の進展

も無かった事にもイライラしていた。

結局、川名の事が気になり始めてから今日まで何一つ川

名の素性は分かっていない。

コマ切れのような状況証拠以外の情報は無いのである。

奥さん達にも、そろそろ何か報告しなくちゃいけないと、

洋子は少し焦り始めていた。

                   7月6日

心音が高雄に聞こえるんじゃないかと、思えば思う程、

洋子の心臓は大きく、そして早く脈打った。

時計は午前1時を少し回った頃を指している。

高雄はもう寝入っている様だったが、洋子は念の為2時

頃まで布団の中で睡魔と闘った。

時計が2時を回ると、洋子は高雄の様子を見てゆっくりと

布団から這い出る。

そして、静かに部屋を出ると、足音を立てずに1階に降りた。

リビングから川名の家を見ると、川名の家に電気は点いて

いない。

周囲の家も電気は消えている。

洋子は音を立てずに家を出た。

そして、川名の家の駐車場脇から裏庭に入り、ゴミ置き

場からゴミ袋を2つ持って来てキッチンに置くと、少し気

持ちを落ち着けてから再び布団に戻った。

翌朝高雄には何事も無く振る舞い、いつもの様に見送

った。

洋子は高雄を見送ると、急いでリビングのカーテンを閉

め、新聞を敷き、キッチンからゴミ袋を持って来た。

ゴミ袋の中身が生ゴミでないのを確かめると、新聞紙の

上に少しずつゴミを出してゆく。

1つ目の袋を開けると強烈に酒の臭いがした。

案の定ビールの缶やチュウハイの缶が山ほど入っている。

この袋は台所から出た物らしく、缶詰や、冷凍食品の袋等

が沢山入っていた。

割り箸やら、燃えるゴミも随分混じっている。

まるで大学生の独り暮らしじゃないの、と洋子は思った。

1つ目の袋には興味を引く物は入っていなかったので、

洋子は2つ目の袋を開け始める。

しかし、開いた途端洋子の表情は固まる。

血の付いたワンピースが入っていた。

恐る恐る洋子は袋からそれを出した。

新聞紙の上に開いてみると、スカートの端の方の布だけ

が5cm四方程であろうか?切り取られている。

他にも袋の中には、カーディガンやら、女子校の制服やら

、シミーズの様な物が入っていて同じ様に切り取られている。

そして、どう見てもそれらのサイズはまちまちで、同一人物

の物とは思えなかった。

何故みんな同じ様に切り取られているのだろうか?

この血はどう言う事なのだろうか?

洋子はここまで踏み込んでしまった事を、少し後悔した。

そして、大きな不安を感じた。

しかし同時に、この先考えられない様な事が分かるかも

しれないと言う期待感に近いものが膨れ上がっていたの

も確かだった。

                   7月7日

「ゴメンな、来週は時間作るようにするから」

高雄はゴルフバッグを車に積み込みながら言った。

高雄は今日は大事な得意先の人とゴルフ。

そして、明日は部下の結婚式らしく、今週末はいつもの

デートが出来ない。

しかし、洋子は川名の事が気になってそれ所ではなか

ったし、埋め合わせとして高雄がバッグを買ってくれる

と言うので

「うん、気にしないで。怪我には気をつけてよ」

明るく送り出した。

洋子は、さしてやる事も無かったが、午前中はちらちら

と川名の家を窺いながら細かい家事をしていた、が、川

名はまだ起きていないらしくカーテンは閉まり切っていた。

昼を回った頃、洋子が玄関前の掃除をしていると、制服

を着た女の子が洋子の前を通り川名の家のベルを鳴ら

した。

この間の娘と違う・・・

洋子は急いで家に戻ると、キッチンに隠しておいた双眼

鏡を取り出した。

2階の仏像の部屋はまだカーテンが閉まっていたが、こ

の時間には居間は開いていたので、洋子はリビングの

カーテンに隠れて川名の居間を覗いた。

少し待っていると、川名の居間に人が入って来た様だった。

川名とあの女子高生は居間に居る筈なのだが、両家の

間にある木々と、川名の家の壁が邪魔して上手く見えない。

まさか、正面から堂々と双眼鏡で覗くわけにもいかないので

、洋子は少し考え家を出た。

川名の家の庭と、洋子の家の庭は隣り合っているので庭か

ら覗こうか?とも思ったが、向こうのリビングから丸見えにな

ってしまうので出来ない。

じゃあ、近付けば少しは見えるかもと、昨晩と同じく駐車場か

ら川名宅に入り、裏庭ゴミ置き場の脇からさっき覗いていた窓

をバレない程度に顔を出し覗いた。

しかし、やはりちらちらと女の子が見える程度で、川名の様子

は窺えなかった。

どうしよう?

洋子がしゃがみ込むと、微かに女の子の泣き声が聞こえて来る。

洋子は耳を澄ませた。

「他の娘だってそうだったんだから、分かったね?」

と言う川名であろう男の声の後に、泣きながら

「はい」

と言う女の子の声が聞こえて来た。

「じゃあ、僕は上で待ってるから」

男の声がすると扉の閉まる音がした。

他の娘もそうだった?

洋子は我慢出来なくなり、ずいと顔を突き出し川名宅のリ

ビングを覗いてしまった。

すると、制服を着ていた女子高生が制服を脱ごうとしている。

娘は、セーラーの胸元のリボンを解きシャツを脱ぎかけると、

ふと顔を上げ洋子の覗く窓の方に歩いて来た。

洋子は急いで顔を引っ込めると、シャッとリビングのカーテ

ンは閉められてしまった。

洋子は、しゃがみ込んだまましばらく動けなかった。

心音が壁を抜け女子高生に聞かれるんじゃないかと言う

程脈打っていた。

少し経ち落ち着いてくると

『2階で待っている』

と言っていた川名の言葉を思い出し急いで家に戻り再び

双眼鏡を手に川名宅を覗いた。

しかし、やはりカーテンは閉まったままだった。

いつもこうである。

肝心の部分が分からない。

今日は、洋子は覚悟を決め女子高生の出てくるのを待

つ事にした。

1時間ほど経っただろうか?

川名の玄関先で音がしたように思ったので、洋子は2階

ベランダから様子を窺う。

すると、来た時とは違う私服に着替えた女子高生が泣き

ながら駅の方へ歩いて行った。

川名の家の玄関が閉まるのを確かめると洋子は、階段

を駆け下り、家を出て、女子高生を追った。

「あ・・・あの」

洋子が声をかけると、泣き腫らした女子高生が振り返る。

良く見ると、額の部分に内出血している部分がある。

「あら?おでこどうしたの?」

洋子が言うと、女子高生はサッと額の部分を隠し、不審そ

うな目で洋子を見る。

「あ、私川名さんの隣に住んでて・・・で、あなたが泣きなが

ら出てき来たのを見たから・・・以前もね、あなた位の子が

川名さんの家から泣きながら出て来たの・・・何かあった?」

洋子は話しながら相手の表情をじっくりと観察していた。

すると、女子高生の目に涙が溜まり

「・・・私・・・言えません」

かすれた声でそう言うと走って行ってしまった。

洋子は、娘の表情を見て、川名と娘の間に異性関係があ

ると感じた。

女性の方に断りきれない何かがありそうだ・・・と。

根拠は無い、女性としての直感の様な物だった。

そして洋子は思った、もうこれは一刻の猶予も無い、何か

証拠を掴まなければ・・・と。

                   7月8日

高雄は昼過ぎに家を出た。

そして、洋子は今日こそは何か掴みたかったのだが、川

名の家の車は朝から無く、川名は外出してる様であった。

洋子は、何かを思いついた様に庭に出ると、軽く周囲を

窺い川名の家との間に生える木々の隙間をくぐり抜け川

名の家の庭へ入った。

川名の家のリビングは2面に大きな窓がある。

勿論、1面は洋子の家の窓から見えるそれであるが、洋

子は今日は違う方の窓から覗いてみた。

角度が変われば何か違う物が見えるかと思ったが、やは

りまだ殆どのダンボールは開いておらずそのままであった

し、テレビ、ソファー等の家具も洋子の家から見た時と勿論

変わりは無い。

洋子はため息をついた。

しかし、ふと見ると洋子の覗き見ている窓の鍵が開いている。

洋子は、少しリビングの窓を開けてみる。

やはり窓は開いた。

・・・いけない。

一応洋子に呵責の様な思いは生まれるが、洋子のそれは

もう殆ど洋子自身には響かない物になってしまっていた。

洋子はサンダルを脱ぎ川名のリビングに上がると、窓の

カーテンを全て閉めた。

洋子は興奮していた。

毎日気になっていた川名の家を誰の目も気にせずに調べ

られるのだ。

しかし、無論その内川名は帰って来てしまうので、長居を

する訳にはいかない。

洋子は早速家の探索を始めた。

開いているダンボールには興味を引く物は無かったが、開

いてないダンボールを開けてしまう訳にはいかないので、リ

ビングは置いておき、廊下に出てダイニングキッチンに入っ

ていった。

ダイニングの食卓の上には、食べかけの缶詰やら、使ったま

まの食器や箸がそのまま置かれていた。

キッチンは使っていないのだろうゴミ袋が4つ置かれている以

外は綺麗な物だった。

ここにも、洋子の求める物は無かったので、洋子は再び部屋

を出る。

他、1階には風呂場とトイレがあった。

風呂場は、大家が同じ人なだけあって洋子の家と同じ物が

置かれていた。

トイレはやはり、引越しで持ち込んだウォシュレットが取り付

けられていたがそれ以外に大した収穫は無かった。

洋子は2階に上がった。

1階もそうだったが、2階の廊下にもまだ片付けてないダンボ

ールが積まれている。

洋子は、階段に一番近い扉を開いた。

部屋は6畳ほどだろうか、大きな本棚が3つあり、本が一杯に

詰まっていた。

納まりきらない本はやはりまだダンボールの中である。

洋子は1階のリビング同様カーテンを閉め、本棚に目をやる。

すると、本棚にある本の殆どが神社、仏閣、仏像などの本や

写真集であった。

写真集一つを手に取ってみると、本の間に無数のしおりが挟

んであり、そのしおり一つ一つに、そのページの仏像の細か

い説明などが書き加えられていた。

これを見て、洋子の中でやっと1つだけ川名の謎が解けた様

に思えた。

・・・あの大きな仏像は川名の趣味に違いない。

しかし、1つ謎が解明されると人間欲が出るものだ。

大分時間は経ってしまっていたが、洋子は他に何かない

か?と隣の部屋へ入って行き再びカーテンを閉める。

この部屋はベッドがあるので寝室の様だ。

洋服はクローゼットに仕舞うでもなく、脱ぎ散らかしている

のか、まだ着ていない物なのか、床に散らばっている。

ベッドも寝て起きたそのままだった。

部屋を見渡すと、机の上に開けっ放しのダンボールが置

かれ、ベッド脇のサイドボードには数枚の封筒と、ここにも

また仏像に関する本が置いてあった。

洋子はまず、ダンボールを覗いた。

すると、中には10代のアイドルのグラビアや、写真集が入

っている。

どうも全て「金沢まお」と言う同じアイドルの物の様である。

丁寧に新聞や雑誌をスクラップした物もあった。

これを見て、洋子は先日から持っていた考えは確信に近

付いたと思った。

・・・やはり、川名は少女愛好家なのではないか?

そう考えると、先日抱き合っていた女子高生や、昨日泣い

ていた娘の事もつじつまが合う様に思う。

洋子は、この考えを確信にすべく再び辺りを探る。

サイドボードに置かれた封筒は航空会社から来た物と、通

販のカタログなどだった。

が、今は洋子の興味はそんな所には無い。

そして、クローゼットを見てみようと手を伸ばした時、通りの

方から『バタン、バタンバタン』と車のドアの閉まる音がする。

洋子はふと我に返り表を見たが、自分を取り戻すのが少し

遅かった。

洋子の目にパトカーが、そして警察官と川名、近所の奥さ

んが数人立っていた。

洋子は、体の血が全て抜けていくような感覚に襲われた。

そして、体中の力が抜けてしまい、その場で泣き崩れてし

まった。

その後、川名に付き添われ入って来た警察官に抱き起こ

され川名の家を出ると、洋子は近所の片山、三井などの

見ている中パトカーに乗せられて連行された。

                   7月8日

洋子は警察署3階の個室の様な部屋に連れて行かれた。

「手続きがあるのでここで待ってて下さい」

付き添っていた警官はそう言うと部屋を出て行く。

警官が出て行くと、丁度入れ違いの様に婦警に連れられた

川名が入って来た。

「少し話がしたいので・・・良いですか?」

川名がそう言うと

「本来はそう言う事は・・・分かりました、少しなら。私は表に

立っているので終わったら声をかけて下さい」

婦警は部屋を出て行った。

「本当に・・・本当に申し訳ありませんでした!!」

洋子は床にしゃがみ込み泣きながら川名に詫びた。

「もう良いですから椅子に座ってください、そんな事して欲し

くありませんから・・・」

洋子を抱え上げ椅子に座らせると、机をはさむ様に川名もコ

ートを脱ぎ座った。

洋子は泣きながら

「本当にすみません、すみません・・・すみません」

繰り返すだけだったが

「何故ですか?何故・・・」

川名が聞くと、泣きながらもゆっくりと、そして少しずつ洋子

は話し始めた。

この段階に来て嘘をついても仕方がない。

それに、やっとこの場所に来て自分のして来た愚かな行為

に気付いた洋子は包み隠さず川名に自分の思っていた事、

何故家に入ってしまったかを話した。

1人で観覧車に乗っていたのを見た事、女子高生2人との関

係が気になっていた事、家族が引っ越して来ない事、川名の

父と野口の手紙の事、「金沢まお」と言うアイドルの事、ゴミ

袋を漁ったら洋服が四角く切り取られていた事、そして、その

洋服が血で汚れていた事など、全て話した。

すると、それまで黙って聞いていた川名が大きく息を吸い口

を開く。

「・・・そうですか」

そう言うと川名はため息をついた。

「何故私がこんな格好をしてるか分かりますか?」

川名が言うと洋子は涙ぐんだ顔を上げる。

すると、今まで頭が混乱して気付かなかったが、川名は黒

のスーツに黒ネクタイと言うまるで葬式の様な格好をしている。

「四十九日なんですよ・・・」

洋子が不思議そうな顔をすると

川名は目頭を押さえ、声を潤ませながら

「あなたになんかこんな話しはしたくないですが・・・変に疑

われたままと言うのも嫌ですし、それよりも、あなたがした

事がどれだけ人の気持ちを踏みにじった行為かを分からせ

たいので話します・・・」

洋子は俯いて聞いている。

「四十九日前、飛行機事故があったのを覚えてますか?」

洋子は『あ!』と顔を上げた。

そう言えば何とか言うアイドルがその事故で死んだと言う

のが少し前ワイドショーでやっていた。

「その日私はその飛行機で妻と・・・大学と高校に入った

ばかりの息子と娘・・・家族4人で旅行に行く筈だった・・・」

そう言うと川名の呼吸が荒くなった。

「・・・でも、私は急の仕事が入って行けなくなった、結局旅

行は私を除いた3人で行く事になったんです・・・そして3人

はその飛行機に乗って・・・」

川名の目から涙が溢れる。

「引っ越してきたのは、あの家に居ると皆の顔を思い出して

しまうからです。私が一人で乗った観覧車は、娘が初めて

出来た彼との初めてのデートで乗った物でした。そして、そ

の娘と言うのが「金沢まお」です。・・・野口洋子は私の妻の

姉です、父はあの事故の後痴呆が進んでしまった・・・あなた

が持って行ったと言う洋服の切れ端は思い出として取ってお

きたかっただけです」

そう言うと川名は小刻みに震え始め

「・・・血が付いていたのだってその時に手を切っただけだ!」

急に声を荒げた。

「あなたがいやらしく想像した2人の娘は長女の親友で、引

っ越した先までわざわざ線香を上げに来てくれただけなんで

すよ!!洋服を脱いだ?私が他の娘もそうしてると言った?

私の家でその娘が着替えて何がおかしいんですか!その娘

が葬式に来れなかったからと渡された香典を断ったら私はそ

の娘と関係を持った事になるんですか!!あなたは・・・あな

たは自分の興味だけで・・・私の、私の唯でさえ苦しい部分を

踏みにじったんですよ!!人って言うのは色々な事を抱えな

がら生きてるんじゃないですか?それを唯の興味だけで・・・」

「・・・本当に、本当に申し訳ありません!」

洋子は床に崩れ落ちた。

「本当に・・・」

川名は床にへたり込んでいる洋子をじっと見ると、コートを手

に立ち上がり

「・・・もう良いです」

そう言って部屋から出て行った。

その後警官が戻って来ると、警官は洋子にこう告げる。

「川名さんは訴えを取り下げるそうです。このままお帰りに

なって結構です」

洋子はその場にうずくまり声を上げて泣いた。

                           おわり

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2008/01/21

隣人A

                7月8日

洋子は警察署3階の個室の様な部屋に連れて行かれた。

「手続きがあるのでここで待ってて下さい」

付き添っていた警官はそう言うと部屋を出て行く。

警官が出て行くと、丁度入れ違いの様に婦警に連れられた

川名が入って来た。

「少し話がしたいので・・・良いですか?」

川名がそう言うと

「本来はそう言う事は・・・分かりました、少しなら。私は表に

立っているので終わったら声をかけて下さい」

婦警は部屋を出て行った。

「本当に・・・本当に申し訳ありませんでした!!」

洋子は床にしゃがみ込み泣きながら川名に詫びた。

「もう良いですから椅子に座ってください、そんな事して欲し

くありませんから・・・」

洋子を抱え上げ椅子に座らせると、机をはさむ様に川名もコ

ートを脱ぎ座った。

洋子は泣きながら

「本当にすみません、すみません・・・すみません」

繰り返すだけだったが

「何故ですか?何故・・・」

川名が聞くと、泣きながらもゆっくりと、そして少しずつ洋子

は話し始めた。

この段階に来て嘘をついても仕方がない。

それに、やっとこの場所に来て自分のして来た愚かな行為

に気付いた洋子は包み隠さず川名に自分の思っていた事、

何故家に入ってしまったかを話した。

1人で観覧車に乗っていたのを見た事、女子高生2人との関

係が気になっていた事、家族が引っ越して来ない事、川名の

父と野口の手紙の事、「金沢まお」と言うアイドルの事、ゴミ

袋を漁ったら洋服が四角く切り取られていた事、そして、その

洋服が血で汚れていた事など、全て話した。

すると、それまで黙って聞いていた川名が大きく息を吸い口

を開く。

「・・・そうですか」

そう言うと川名はため息をついた。

「何故私がこんな格好をしてるか分かりますか?」

川名が言うと洋子は涙ぐんだ顔を上げる。

すると、今まで頭が混乱して気付かなかったが、川名は黒

のスーツに黒ネクタイと言うまるで葬式の様な格好をしている。

「四十九日なんですよ・・・」

洋子が不思議そうな顔をすると

川名は目頭を押さえ、声を潤ませながら

「あなたになんかこんな話しはしたくないですが・・・変に疑

われたままと言うのも嫌ですし、それよりも、あなたがした

事がどれだけ人の気持ちを踏みにじった行為かを分からせ

たいので話します・・・」

洋子は俯いて聞いている。

「四十九日前、飛行機事故があったのを覚えてますか?」

洋子は『あ!』と顔を上げた。

確か何とか言うアイドルがその事故で死んだと言うのが

ワイドショーでやっていた。

「その日私はその飛行機で妻と・・・大学と高校に入った

ばかりの息子と娘・・・家族4人で旅行に行く筈だった・・・」

そう言うと川名の呼吸が荒くなった。

「・・・でも、私は急の仕事が入って行けなくなった、結局旅

行は私を除いた3人で行く事になったんです・・・そして3人

はその飛行機に乗って・・・」

川名の目から涙が溢れる。

「引っ越してきたのは、あの家に居ると皆の顔を思い出して

しまうからです。私が一人で乗った観覧車は、娘が初めて

出来た彼との初めてのデートで乗った物でした。そして、そ

の娘と言うのが「金沢まお」です。・・・野口洋子は私の妻の

姉です、父はあの事故の後痴呆が進んでしまった・・・あなた

が持って行ったと言う洋服の切れ端は思い出として取ってお

きたかっただけです」

そう言うと川名は小刻みに震え始め

「・・・血が付いていたのだってその時に手を切っただけだ!」

急に声を荒げた。

「あなたがいやらしく想像した2人の娘は長女の親友で、引

っ越した先までわざわざ線香を上げに来てくれただけなんで

すよ!!洋服を脱いだ?私が他の娘もそうしてると言った?

私の家でその娘が着替えて何がおかしいんですか!その娘

が葬式に来れなかったからと渡された香典を断ったら私はそ

の娘と関係を持った事になるんですか!!あなたは・・・あな

たは自分の興味だけで・・・私の、私の唯でさえ苦しい部分を

踏みにじったんですよ!!人って言うのは色々な事を抱えな

がら生きてるんじゃないですか?それを唯の興味だけで・・・」

「・・・本当に、本当に申し訳ありません!」

洋子は床に崩れ落ちた。

「本当に・・・」

川名は床にへたり込んでいる洋子をじっと見ると、コートを手

に立ち上がり

「・・・もう良いです」

そう言って部屋から出て行った。

その後警官が戻って来ると、警官は洋子にこう告げる。

「川名さんは訴えを取り下げるそうです。このままお帰りに

なって結構です」

洋子はその場にうずくまり声を上げて泣いた。

                           おわり

これで、隣人Aは終了になります。

少しは楽しんでいただけたでしょうか?

次回は・・・今少しお待ち下さい。

ネタもそうですが、書かなきゃいけない物が他にも出来て

しまい、時間がないのです・・・

また、ブロ本始める時は大々的に宣伝させてもらいますの

で宜しくお願いしますね~♪

とにかく最終回♪

楽しんでもらえてたら嬉しいなぁ。

感想などあったらコメントもお待ちしてま~す♪

過去のブロ本リンク↓

隣人A第一話

隣人A第二話

隣人A第三話

隣人A第四話

隣人A第五話

隣人A第六話

隣人A第七話

隣人A第八話

隣人A第九話

隣人A第十話

隣人A第十一話

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2008/01/07

隣人A

                  7月8日

高雄は昼過ぎに家を出た。

そして、洋子は今日こそは何か掴みたかったのだが、川

名の家の車は朝から無く、川名は外出してる様であった。

洋子は、何かを思いついた様に庭に出ると、軽く周囲を

窺い川名の家との間に生える木々の隙間をくぐり抜け川

名の家の庭へ入った。

川名の家のリビングは2面に大きな窓がある。

勿論、1面は洋子の家の窓から見えるそれであるが、洋

子は今日は違う方の窓から覗いてみた。

角度が変われば何か違う物が見えるかと思ったが、やは

りまだ殆どのダンボールは開いておらずそのままであった

し、テレビ、ソファー等の家具も洋子の家から見た時と勿論

変わりは無い。

洋子はため息をついた。

しかし、ふと見ると洋子の覗き見ている窓の鍵が開いている。

洋子は、少しリビングの窓を開けてみる。

やはり窓は開いた。

・・・いけない。

一応洋子に呵責の様な思いは生まれるが、洋子のそれは

もう殆ど洋子自身には響かない物になってしまっていた。

洋子はサンダルを脱ぎ川名のリビングに上がると、窓の

カーテンを全て閉めた。

洋子は興奮していた。

毎日気になっていた川名の家を誰の目も気にせずに調べ

られるのだ。

しかし、無論その内川名は帰って来てしまうので、長居を

する訳にはいかない。

洋子は早速家の探索を始めた。

開いているダンボールには興味を引く物は無かったが、開

いてないダンボールを開けてしまう訳にはいかないので、リ

ビングは置いておき、廊下に出てダイニングキッチンに入っ

ていった。

ダイニングの食卓の上には、食べかけの缶詰やら、使ったま

まの食器や箸がそのまま置かれていた。

キッチンは使っていないのだろうゴミ袋が4つ置かれている以

外は綺麗な物だった。

ここにも、洋子の求める物は無かったので、洋子は再び部屋

を出る。

他、1階には風呂場とトイレがあった。

風呂場は、大家が同じ人なだけあって洋子の家と同じ物が

置かれていた。

トイレはやはり、引越しで持ち込んだウォシュレットが取り付

けられていたがそれ以外に大した収穫は無かった。

洋子は2階に上がった。

1階もそうだったが、2階の廊下にもまだ片付けてないダンボ

ールが積まれている。

洋子は、階段に一番近い扉を開いた。

部屋は6畳ほどだろうか、大きな本棚が3つあり、本が一杯に

詰まっていた。

納まりきらない本はやはりまだダンボールの中である。

洋子は1階のリビング同様カーテンを閉め、本棚に目をやる。

すると、本棚にある本の殆どが神社、仏閣、仏像などの本や

写真集であった。

写真集一つを手に取ってみると、本の間に無数のしおりが挟

んであり、そのしおり一つ一つに、そのページの仏像の細か

い説明などが書き加えられていた。

これを見て、洋子の中でやっと1つだけ川名の謎が解けた様

に思えた。

・・・あの大きな仏像は川名の趣味に違いない。

しかし、1つ謎が解明されると人間欲が出るものだ。

大分時間は経ってしまっていたが、洋子は他に何かない

か?と隣の部屋へ入って行き再びカーテンを閉める。

この部屋はベッドがあるので寝室の様だ。

洋服はクローゼットに仕舞うでもなく、脱ぎ散らかしている

のか、まだ着ていない物なのか、床に散らばっている。

ベッドも寝て起きたそのままだった。

部屋を見渡すと、机の上に開けっ放しのダンボールが置

かれ、ベッド脇のサイドボードには数枚の封筒と、ここにも

また仏像に関する本が置いてあった。

洋子はまず、ダンボールを覗いた。

すると、中には10代のアイドルのグラビアや、写真集が入

っている。

どうも全て「金沢まお」と言う同じアイドルの物の様である。

丁寧に新聞や雑誌をスクラップした物もあった。

これを見て、洋子は先日から持っていた考えは確信に近

付いたと思った。

・・・やはり、川名は少女愛好家なのではないか?

そう考えると、先日抱き合っていた女子高生や、昨日泣い

ていた娘の事もつじつまが合う様に思う。

洋子は、この考えを確信にすべく再び辺りを探る。

サイドボードに置かれた封筒は航空会社から来た物と、通

販のカタログなどだった。

が、今は洋子の興味はそんな所には無い。

そして、クローゼットを見てみようと手を伸ばした時、通りの

方から『バタン、バタンバタン』と車のドアの閉まる音がする。

洋子はふと我に返り表を見たが、自分を取り戻すのが少し

遅かった。

洋子の目にパトカーが、そして警察官と川名、近所の奥さ

んが数人立っていた。

洋子は、体の血が全て抜けていくような感覚に襲われた。

そして、体中の力が抜けてしまい、その場で泣き崩れてし

まった。

その後、川名に付き添われ入って来た警察官に抱き起こ

され川名の家を出ると、洋子は近所の片山、三井などの

見ている中パトカーに乗せられて連行された。

さて、皆さん!今回がブロ本ラストです!

・・・と言っても、次回もあります♪

何故か?

それは、長くなってしまったので次回警察署の件を書いて

終了だからです♪

なので、今回は投票はありません!

・・・申し訳ありませんが、ここで投票してしまうと話しがどう

にもならなくなってしまうので・・・

と言う事で、次回隣人Aラストをお楽しみに♪

川名はどんな人なのか?

そして、洋子はどうなってしまうのか?

コメントで感想などもらえたら嬉しいです♪

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隣人A第一話

隣人A第二話

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2007/12/24

隣人A

                 7月7日

「ゴメンな、来週は時間作るようにするから」

高雄はゴルフバッグを車に積み込みながら言った。

高雄は今日は大事な得意先の人とゴルフ。

そして、明日は部下の結婚式らしく、今週末はいつもの

デートが出来ない。

しかし、洋子は川名の事が気になってそれ所ではなか

ったし、埋め合わせとして高雄がバッグを買ってくれる

と言うので

「うん、気にしないで。怪我には気をつけてよ」

明るく送り出した。

洋子は、さしてやる事も無かったが、午前中はちらちら

と川名の家を窺いながら細かい家事をしていた、が、川

名はまだ起きていないらしくカーテンは閉まり切っていた。

昼を回った頃、洋子が玄関前の掃除をしていると、制服

を着た女の子が洋子の前を通り川名の家のベルを鳴ら

した。

この間の娘と違う・・・

洋子は急いで家に戻ると、キッチンに隠しておいた双眼

鏡を取り出した。

2階の仏像の部屋はまだカーテンが閉まっていたが、こ

の時間には居間は開いていたので、洋子はリビングの

カーテンに隠れて川名の居間を覗いた。

少し待っていると、川名の居間に人が入って来た様だった。

川名とあの女子高生は居間に居る筈なのだが、両家の

間にある木々と、川名の家の壁が邪魔して上手く見えない。

まさか、正面から堂々と双眼鏡で覗くわけにもいかないので

、洋子は少し考え家を出た。

川名の家の庭と、洋子の家の庭は隣り合っているので庭か

ら覗こうか?とも思ったが、向こうのリビングから丸見えにな

ってしまうので出来ない。

じゃあ、近付けば少しは見えるかもと、昨晩と同じく駐車場か

ら川名宅に入り、裏庭ゴミ置き場の脇からさっき覗いていた窓

をバレない程度に顔を出し覗いた。

しかし、やはりちらちらと女の子が見える程度で、川名の様子

は窺えなかった。

どうしよう?

洋子がしゃがみ込むと、微かに女の子の泣き声が聞こえて来る。

洋子は耳を澄ませた。

「他の娘だってそうだったんだから、分かったね?」

と言う川名であろう男の声の後に、泣きながら

「はい」

と言う女の子の声が聞こえて来た。

「じゃあ、僕は上で待ってるから」

男の声がすると扉の閉まる音がした。

他の娘もそうだった?

洋子は我慢出来なくなり、ずいと顔を突き出し川名宅のリ

ビングを覗いてしまった。

すると、制服を着ていた女子高生が制服を脱ごうとしている。

娘は、セーラーの胸元のリボンを解きシャツを脱ぎかけると、

ふと顔を上げ洋子の覗く窓の方に歩いて来た。

洋子は急いで顔を引っ込めると、シャッとリビングのカーテ

ンは閉められてしまった。

洋子は、しゃがみ込んだまましばらく動けなかった。

心音が壁を抜け女子高生に聞かれるんじゃないかと言う

程脈打っていた。

少し経ち落ち着いてくると

『2階で待っている』

と言っていた川名の言葉を思い出し急いで家に戻り再び

双眼鏡を手に川名宅を覗いた。

しかし、やはりカーテンは閉まったままだった。

いつもこうである。

肝心の部分が分からない。

今日は、洋子は覚悟を決め女子高生の出てくるのを待

つ事にした。

1時間ほど経っただろうか?

川名の玄関先で音がしたように思ったので、洋子は2階

ベランダから様子を窺う。

すると、来た時とは違う私服に着替えた女子高生が泣き

ながら駅の方へ歩いて行った。

川名の家の玄関が閉まるのを確かめると洋子は、階段

を駆け下り、家を出て、女子高生を追った。

「あ・・・あの」

洋子が声をかけると、泣き腫らした女子高生が振り返る。

良く見ると、額の部分に内出血している部分がある。

「あら?おでこどうしたの?」

洋子が言うと、女子高生はサッと額の部分を隠し、不審そ

うな目で洋子を見る。

「あ、私川名さんの隣に住んでて・・・で、あなたが泣きなが

ら出てき来たのを見たから・・・以前もね、あなた位の子が

川名さんの家から泣きながら出て来たの・・・何かあった?」

洋子は話しながら相手の表情をじっくりと観察していた。

すると、女子高生の目に涙が溜まり

「・・・私・・・言えません」

かすれた声でそう言うと走って行ってしまった。

洋子は、娘の表情を見て、川名と娘の間に異性関係があ

ると感じた。

女性の方に断りきれない何かがありそうだ・・・と。

根拠は無い、女性としての直感の様な物だった。

そして洋子は思った、もうこれは一刻の猶予も無い、何か

証拠を掴まなければ・・・と。

さて、ここからがいつもの質問になります!

次回洋子はなななななんと!川名の家に忍び込んじゃ

います!!!!!!!!

忍び込む事自体は変えたくないので、何時頃に忍び

込むかを皆さんに決めてもらいたいと思います♪

1・・・夜中、高雄の寝ている間に。

2・・・午前中、高雄、川名在宅中に。

3・・・午後、高雄を見送り川名在宅中に。

4・・・午後、高雄、川名の留守中に。

今回も、前回と投票方法は同じです♪

コメントで好きな番号を投稿してください!

投票で1番多かった番号の設定で次回の話しを進めます。

投票は、28日いぱいで締め切りますよ~♪

では、皆さん素敵なクリスマスイヴを♪

投票スタートっ!!!

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2007/12/10

隣人A

                7月6日

心音が高雄に聞こえるんじゃないかと、思えば思う程、

洋子の心臓は大きく、そして早く脈打った。

時計は午前1時を少し回った頃を指している。

高雄はもう寝入っている様だったが、洋子は念の為2時

頃まで布団の中で睡魔と闘った。

時計が2時を回ると、洋子は高雄の様子を見てゆっくりと

布団から這い出る。

そして、静かに部屋を出ると、足音を立てずに1階に降りた。

リビングから川名の家を見ると、川名の家に電気は点いて

いない。

周囲の家も電気は消えている。

洋子は音を立てずに家を出た。

そして、川名の家の駐車場脇から裏庭に入り、ゴミ置き

場からゴミ袋を2つ持って来てキッチンに置くと、少し気

持ちを落ち着けてから再び布団に戻った。

翌朝高雄には何事も無く振る舞い、いつもの様に見送

った。

洋子は高雄を見送ると、急いでリビングのカーテンを閉

め、新聞を敷き、キッチンからゴミ袋を持って来た。

ゴミ袋の中身が生ゴミでないのを確かめると、新聞紙の

上に少しずつゴミを出してゆく。

1つ目の袋を開けると強烈に酒の臭いがした。

案の定ビールの缶やチュウハイの缶が山ほど入っている。

この袋は台所から出た物らしく、缶詰や、冷凍食品の袋等

が沢山入っていた。

割り箸やら、燃えるゴミも随分混じっている。

まるで大学生の独り暮らしじゃないの、と洋子は思った。

1つ目の袋には興味を引く物は入っていなかったので、

洋子は2つ目の袋を開け始める。

しかし、開いた途端洋子の表情は固まる。

血の付いたワンピースが入っていた。

恐る恐る洋子は袋からそれを出した。

新聞紙の上に開いてみると、スカートの端の方の布だけ

が5cm四方程であろうか?切り取られている。

他にも袋の中には、カーディガンやら、女子校の制服やら

、シミーズの様な物が入っていて同じ様に切り取られている。

そして、どう見てもそれらのサイズはまちまちで、同一人物

の物とは思えなかった。

何故みんな同じ様に切り取られているのだろうか?

この血はどう言う事なのだろうか?

洋子はここまで踏み込んでしまった事を、少し後悔した。

そして、大きな不安を感じた。

しかし同時に、この先考えられない様な事が分かるかも

しれないと言う期待感に近いものが膨れ上がっていたの

も確かだった。

さて、ここでいつもの質問です♪

次回、川名の家に女性が訪ねてきます。

どの様な女性が来たら面白いと思いますか?

1・・・野口順子

2・・・女子高生

3・・・女子大生

4・・・40代の女性

投票は14日いっぱいで締め切ります。

投票の仕方は、コメントの投稿と同じ要領で、名前、アド

レス、そして’内容’と書かれた所に気になった番号を書

き込んで’送信’を押せば完了♪

投票を集計して、1番多かった番号を元に話しを作って

いきます!

初めての方も気軽にご参加下さい♪

では、投票すたーとっ!!!

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2007/11/26

隣人A

                7月5日

洋子は新宿に向かう電車の中に居た。

無論、鞄の中には野口が川名に宛てた手紙が入っている。

本来なら、この手紙は川名に渡すのが当然であるが、家に

居ないので届けたと言う事にし、そこから少しでも川名の事

を聞ければ・・・と洋子の中でシミュレーションは出来ていた。

洋子は新宿駅に着くと東口に出、傘の波を抜けて歌舞伎

町へ向かった。

新宿の地理に詳しくない洋子は、以前川名を追跡した時に

あったコンビニを探したが見付からず、キョロキョロしながら

歩いていた。

「あ、お姉さんどこか探してたりします?」

ナンパだろう若い男が声をかけてくる。

「僕、一緒に探してあげますよ?」

「お姉さん何処から来たんですか?」

少ししつこいので逃げるようにしてその男の子から離れ

ると、洋子は偶然見覚えのあるラブホテルの前に居た。

洋子は葉書を見て、ホテルの隣が野口の住むマンション

である事を確かめると、大きく息を吸い込み2階へ上がった。

古い建物である。

近隣の建物も密集しているので日当たりも悪そうでジメジメ

していた。

緊張しながら洋子が玄関のチャイムを鳴らすと

「はい、どなた?」

少し年配の女性の声が返ってきた。

「あ・・・あの川名さんの隣に住んでる者ですが・・・」

洋子が言うと、扉の向こうからあからさまにトーンの落ちた

「はい」

と言う声が聞こえる。

扉を開け出てきた女性は案の定、怪訝そうな顔をしていた。

歳は川名と同じ位であろうか?

これから出かけるらしく化粧は濃く、若作りに必死なのはその

化粧を見てもすぐに分かる。

洋子はサッと手紙を差し出し

「あの、私の家に誤配されまして・・・で、今日川名さんが

お留守の様なので、失礼だと思ったんですが住所見たら

歌舞伎町なので・・・で、今日丁度新宿に来る予定があっ

たので届けに・・・」

たどたどしくはなってしまったが、一応シミュレーション通

りに言葉は繋いだ。

「あらそれは、あ、じゃあ内容も読まれちゃってるわね。

汚い字で恥ずかしいわ。わざわざありがとうございます」

言いながら野口が扉を閉めようとしたので、洋子は

「・・・あの」

呼び止めた。

「あの、川名さん引っ越されてから家族の方いらっしゃら

ない様なんですが、何か知ってらっしゃいますか?・・・何

か元気が無さそうなので心配で・・・」

洋子は川名を気遣うように言ったが

「・・・・・・・手紙ありがとうございました」

野口は何も答えずに扉を閉めた。

洋子は仕方なく帰りの途についた。

しかし、あれ位の会話は近所の奥さん達とも良くする様

な内容である。

しかも、わざわざ手紙を持って来た人間に、普通あんな態

度をとるだろうか?

洋子は、野口の態度もそうだが、新宿まで来て何の進展

も無かった事にもイライラしていた。

結局、川名の事が気になり始めてから今日まで何一つ川

名の素性は分かっていない。

コマ切れのような状況証拠以外の情報は無いのである。

奥さん達にも、そろそろ何か報告しなくちゃいけないと、

洋子は少し焦り始めていた。

さて、ここでいつもの質問です。

このままで進展が見込めないと思った洋子は次回どんな

行動を起こすでしょう?

1・・・川名の父の家に電話する。

2・・・川名の家のゴミ箱を漁る。

3・・・川名の家に来る訪問客に話を聞く。

今回も、コメント欄から投票して下さい♪

名前、メールアドレス(URLと書かれた所は記入の必要

はありません)、そして内容;の所に気になった次回の

展開の番号を書き込み、送信を押していただけたら投票

完了です♪

では投票締め切りは11月30日いっぱい!!

投票スタートっ!!

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2007/11/12

隣人A

                7月5日

しとしと雨が降っている。

洋子は少し小降りになったのを見計らい家を出ると、丁度

郵便配達のバイクが走って来た。

「あ、奥さんですか?今日の分です」

配達員のお兄さんに手紙を渡され、洋子は一旦家に戻る。

そして、手紙を靴箱の上に置いた途端、洋子は思いついた

ように玄関を飛び出し、川名の家に車があるかを確認した。

が、無い。

と、言う事は川名は外出したのだろう。

洋子は周囲を見渡し、近所の人間が居ないのを確認す

ると、周囲に気を配りながら川名の家の前まで来た。

ドキドキしていた。

こんな事を自分がする人間だとは今でも思っていない

が、洋子の手は自分の思いとは裏腹に、川名の家の

郵便受けに入っていた。

洋子は、手に取った数枚の手紙の内容も確かめずに

家に走り戻ると、リビングのカーテンを閉じ、机に手紙

を並べる。

葉書1枚。

封書が1枚と、ダイレクトメールを持って来た様である。

全てに川名陽二と書かれているので、あのボサボサ

頭の隣人は陽二と言う名前なのだろう。

ダイレクトメールは、まあタイミング良く家具店のセー

ルかなんかの物であった。

洋子は葉書と封書を見つめていたが、まず葉書を手

に取り読み始めた。

『先日は素敵なバッグをありがとうございました。

私の方はもう気持ちの清算は出来ているので、もうお

気遣い無いように。

あなたのせいだなどとは思っておりません。

                         野口 順子』

裏を返すと、差出人は新宿区歌舞伎町となっている。

そして、封書を手に取ったが、流石に洋子もこれを開け

るのはためらった。

しかし、ここまで来て見ない筈も無く、洋子は台所に濡

れ布巾を取りに行くと、糊付けされた部分を軽く湿らせ

ゆっくりと開封した。

洋子の鼓動は再び高まる。

平々凡々と暮らしてきた洋子にとって、こんなスリリング

な展開は無かったといって良いだろう。

誰に見られている訳でもないのに、洋子は部屋を見回し

手紙を読み始める。

『陽二へ

引っ越したと聞いた

達雄は新しい小学校で馴染めているだろうか。

美子は新しい環境で元気にやっているだろうか。

奥方も、引越し作業疲れただろう、いたわってあげなさ

いよ。

お前も働き盛り、良い歳だとは思うが父さんの様に

家族を省みない様ではいけない。

引越しを機に、しっかりと地に足をつけて家族孝行に

励むように。

                           父より』

毛筆で力無く書かれていた。

多分、達雄と言うのが川名の息子で、美子と言うのが

娘なのだろう。

そして、奥さんが居るという事は、4人家族だと言う事と

、手紙の差出人が山梨に住んでいる川名の父親である

事は分かった。

歌舞伎町の野口と言うのは、以前川名を新宿で見失っ

た時に川名が訪れた場所だろう。

洋子は、2つの手紙の内容と、今自分が持っている川

名の情報を照らし合わせ、葉書の送り主野口と言う女

性と、川名の間に何かあるのではないかと考えた。

そして、家族が未だ調布に移り住んでいない理由もそ

こにあると考えると、事の流れがスムーズなのではな

ないか、とも思った。

夜になり、高雄が家に戻ると、洋子は昼間の手紙の

事はおくびにも出さず、いつもの様に振舞った。

しかし、煮詰まってきた洋子の頭の中は、明日はど

うしようかと言う事で一杯であった。

さてここからいつもの質問に入ります♪

次回は洋子が手紙を基に次の行動を始めます。

どの様な行動を起こしましょうか?

1・・・手紙を奥さん達に見せ、意見を聞く。

2・・・手紙が誤配されたと言い野口の家に行く。

3・・・住所から電話番号を調べ川名の父の家に電話する。

4・・・高雄に手紙が見付かる。

今回も、投票は4日後16日いっぱいで締め切ります。

初めての方もドシドシ投票して下さいね~♪

投票の仕方は、コメントと書かれた所をクリックすると

コメントを書くと書かれた場所があります。

そこに、名前、メールアドレスを打ち込み、内容と書か

れた場所に気になった番号を書き込んで、送信ボタン

を押したら完了♪

軽くコメントなんか頂けると嬉しいです♪

では、投票開始!!

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2007/10/30

隣人A

             7月4日

洋子は高雄を見送ると、午前中の内に夕食の買い物を

済ませて来た。

今日は腰を据えて川名を観察するつもりでいたからだ。

洋子は、高雄に分からないようにキッチンに隠しておい

た双眼鏡を手に取るとまずリビングから、そして2階の

寝室から隣家を覘いてみた。

しかし、もう11時を回ろうと言うのにまだ川名の家のカ

ーテンは閉じている。

さてどうしよう?考えてみたが、相手が動かなくては手

の打ち様も無いので、洋子は隣家を気にしながら掃除を

始め、洗濯物を回した。

洗濯物の脱水が終わってもまだカーテンが開かないの

で、洋子は一計を講じる。

洋子は寝室のベランダへ洗濯物を運び干すと、最後の

一枚を川名の家の敷地内へ落とした。

そして「あら?」とわざとらしい顔をしながら階段を降りる

と、家を出て川名の玄関前に立った。

少し緊張したが、洋子はもうそれよりも興味が勝ってし

まっている。

チャイムを鳴らし、寝ぼけた様な声で対応してきた川名

に事情を説明し待った。

玄関が開くと、寝癖そのままの川名が出てきた。

洋子の狙いは、この隙に家の中を覘く事にあったので

「どこら辺に落としました」

川名が聞いてきて

「あ、裏庭の方です」

答えたが洋子の意識はずっと玄関の奥にあった。

しかし、残念な事にこの作戦は洋子の興味を満たす物は

提供してくれなかった。

リビング同様目に入ってくるのは、ダンボールの積み重な

った物だけだった。

そして、川名に促され裏庭に行き洗濯物を拾うと、洋子は

礼を言い家に戻った。

家に戻ると、もう手は無いのでひたすら監視である。

洋子のチャイムで起きたのだろう、川名の家のカーテンは

開いていたが、洋子が時々双眼鏡で覘いてみても川名は

仏像のある部屋でぼーっと本を読んでいるだけだった。

洋子は寝室を窺いながら色々と考えてみた。

横山に内装業と聞いたが引っ越してきてから働いている様

子は無く、引越しの時は家族の物であろう鏡台やサーフボ

ードなどが運び込まれていたのに、家族の顔を1度も見た

事がない、昨日の女子学生とはどんな関係なのかも分か

らず仕舞いであった。

高雄とのデートの日に感じた、川名が逆に洋子を監視して

いると言う事は無さそうであったが、宗教関係かもしれな

いと言う疑いもまだ洋子の中では拭えていなかった。

洋子は考えれば考える程、何者なのかははっきりしな

ければならないと思った。

再び川名の部屋を双眼鏡で覘くと、川名がベランダに

出て洗濯物を干していた。

洋子は目が合ってしまうと思い、慌てて部屋を出たが、

もしかしたら洗濯物を見れば家族の事が分かるかもし

れないと思い『ガラガラガラ』と言う窓の閉まった音を確

認すると再び寝室に戻った。

そして、洋子の見たそれは

男物のジャージ上下、そして下着が3枚。

バスタオル2枚に、セーラー服だった。

洋子の疑問と謎は更に深まる・・・

さてここからいつもの質問です。

今回は、次回の洋子の行動を今回は決めてください。

1・・・近所の奥さんともう1度集まり情報交換する。

2・・・川名の家に来る手紙をチェックする。

3・・・川名の留守に川名の敷地内に入り調べる。

4・・・川名の出すゴミを調べる。

5・・・川名を1日追跡する。

ちなみに、この間の投票にあった、手紙大家ですが、

手紙の場合は川名今回も選択肢として残しましたが、

洋子が川名の家に来る手紙を手に入れチェックする

所から話しが動く様に・・・そして、大家の場合は川名

の家と洋子の家の大家が一緒と言う設定で考えてい

るので、川名の情報を大家から貰う・・・という風に考

えていました。

さて、次回はどんな話になって行くでしょう?

隣人A第一話

隣人A第二話

隣人A第三話

隣人A第四話

隣人A第五話

初めて投票する方は、コメント欄に名前とメールアドレス

、それと気になった番号(シチュエーション)を書いて送信

して下さい♪

アドレスは一般公開されません。

URLは必要ないので、URLを持っている方以外は記入の

必要はありません♪

投票は11月2日いっぱいで締め切りになります。

では投票スタートっ!!

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2007/10/15

隣人A

             7月3日

昨日奥さん達とあんな話になってしまったが、実際隣を

覘いてみようとなると、洋子は何から始めたら良いのか

分からないまま昼を回ってしまった。

川名の家は朝から人の出入りは無かったように思うが、

リビングや2階の寝室から覘いてみても、部屋は暗く中

の様子は分からなかった。

先日買った高雄のカメラを、とも思ったが壊してしまった

ら後々面倒なので諦める。

監視カメラを設置したら、などとも思ったが、まさか高雄

に隣を覘いていると言う事を知られる訳にもいかないの

でこれも止め、洋子は調布駅にあるデパートに行き3千

円程の簡単な双眼鏡を買って来た。

奥さん達に頼まれたとはいえ、いざ双眼鏡などを使って

覘くとなると勇気のいるもので、洋子は少しの間双眼鏡

を前に考え込んだが、結局興味の方が勝ち、恐る恐るリ

ビングから隣家を覘き出した。

覘いてみると、おもちゃの様なこの双眼鏡が良く見える。

室内が暗いのと、隣家との間に生える木々が邪魔をし、

細かい所までは分からないが、覘いた場所はリビング

で、引っ越して6日も経つのにまだ部屋はダンボールだ

らけで人気も無かった。

2階にいるのかしら?

そう思い、洋子は寝室へ向かう。

やはり、いや特に日本人と言うのは他人の生活や行動

に異常なほど興味がある。

洋子も例に漏れず、覘き始めると最初の良心の呵責な

どは何処かに行ってしまった様で、寝室に入るなり再び

隣家を覘いた。

先日は閉まっていて洋子のお目当ての物を見せてくれ

なかったカーテンも今日は開いている。

やはり、2階もダンボールだらけであったが、覘いたその

部屋には引越しの時に運び込まれた仏像が不気味にデ

ンと置かれている。

しかしここにも人は居ない。

洋子の家から川名の家を覘ける場所はリビングと寝室し

かない。

どうしよう?と考えていると、川名の家の玄関の方で声が

聞こえて来た様に思ったので洋子は寝室のベランダから

覘き見てみる。

すると、良くは見えなかったが人が入って行く。

洋子は急いで1階のリビングに戻り向かいの部屋を覘い

たが、ここには入って来ていない様だったので再び2階へ

戻った。

しかし、仏像の部屋にも人気は無い。

洋子は、私何してるんだろう?とも思ったが、何だか肩透

かしを喰らった様でもあって少しイライラしていた。

仕方ないので、その内来るだろうと寝室に居座り、仏像の

部屋を窺う事にした。

30分程であろうか?飽きてきて洋子がウトウトし始めた頃

に仏像の部屋に明かりが点く。

急いで双眼鏡で覗き込むと、洋子は一気に目が覚めた。

川名がセーラー服を着た女の子の肩を抱いているのである。

そして、女の子の方も川名の胸に顔を埋めている。

洋子は流石にこれは見てはいけないと思い一端部屋を出た。

いけない物を見てしまったという罪悪感もあったが、他人

の秘密を見た快感からだろう、洋子の心臓は高鳴っていた。

衝撃的な光景に面食らい部屋の前で洋子は暫し佇んでいた

が、もう一度確かめようと寝室のドアを開ける。

しかし、仏像のあった部屋のカーテンは閉じられていた。

さて、ここからいつもの質問です!

今回は次回の展開の事は全く書きません!

なので、ひらめきで良いので気になった番号を投票し

てみて下さい♪

勿論今回も投票数の1番多い番号のキーワードを元

に話しを考えて行きます。

次回は、この番号だったらこういう風に書きたかった。

なんてのも簡単に載せるので楽しみにして下さいね~♪

1 手紙

2 大家

3 洗濯物

初めての方も、コメントという所にメールアドレス、名前、

そして記入欄に好きな番号を書いて送信をクリックして

貰えれば投票出来る様になってるのでお願いしますね♪

メールアドレスは一般公開はされないので気が~るに♪

ではでは、ブロ本投票の締め切りは10月19日の0時ま

でです!

投票開始~♪

隣人A第1話

隣人A第2話

隣人A第3話

隣人A第4話

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2007/10/01

隣人A

             7月2日

「洋子ちゃん、ちょっとちょっと!」

洋子が玄関前で掃き掃除をしていると、向かいに住む

片山三春が声をかけてくる。

彼女は50代前半で体格にも貫禄があり、ここに住ん

で長い事から、近所の奥さん連中のボスの様な存在

である。

「あ、おはようございます。何ですか?」

洋子が手を止めると、片山が寄って来て

「洋子ちゃんは今日は予定は?」

と聞いてきたので

「いえ何も・・・」

内心、また面倒な事を頼まれたら嫌だなとは思った

が、実際予定と言う予定は無いのでそう答えた。

「あら、良かった、じゃあ今日2時から近所の奥さん

達と家でお茶するからいらっしゃいよ」

と言うと、片山は洋子の耳元に口を寄せて

「ほら、あなたのお隣の川名さん、少し変じゃない?

こう言う時に奥さん連中がしっかり結束しないとね。

変な人だったりしたら私達でなんとかしなきゃいけな

いでしょ?」

言い終えると、小走りに家に戻って行った。

洋子はまだ「はい」とも「行きます」とも行ってなかった

が参加と言う事になってしまった様である。

しかし川名と聞き、洋子も少し積極的な気持ちになった。

洋子は昼食を簡単に済ませると、義父の送ってきた折り

詰めを手に午後2時丁度に片山の家へ向かった。

片山の家に上がり、リビングに入ると、もう皆そろってお

茶を始めていた。

参加者を川名の家を中心にして見ると、まず向かいの

横山さん、斜め向かいの高岡さん、そして、高岡さんと

反対側斜め向かいの今回の主催者片山さん、洋子の

家から川名の家と反対側向こう4件目の三井さん、そ

して洋子が集まっている。

「あらぁ、洋子ちゃん早く座りなさい。ほら、お菓子もあ

るからどうぞ」

三井は自分の家でもないのに、勝手に台所に入りお

茶を出して来る。

「あ、これこの間義父が送って来た物で、お口に合う

か分かりませんが・・・」

洋子が折り詰めの菓子を差し出すと

「あらぁ、気を使わないでいいのよ若いんだから」

四重奏の様に皆が言う。

そして、一番若手の洋子が皆に気を使いながら席に

つくと、せっかちな片山は早速話し始めた。

「あのね、皆もう何で集まったかは分かってると思う

けど、川名さんの事。あの人がまだどんな人か分か

らないじゃない?で、おかしな人だったら私達が協力

し合わなきゃいけないと思って集まってもらったのよ」

「そうよね、何だか来た日から挨拶もないし、変な人

だったら困るわぁ。それにさ、私や片山さんの子供は

もう大きいから良いけど、高岡さんと横山さんのお子

さんはまだ小さいでしょ?私それが心配なの」

三井が言うと

「そうなんです、私もそれが心配で・・・」

と高岡が話す横で横山が頷いている。

「で、とりあえず今日は皆さん持っている情報を交

換しようと思った訳。洋子ちゃんなんかはお隣なん

だし色々分かった事あるんじゃない?」

片山に聞かれ、洋子は勿論昨日の事は話さなか

ったが、仏像の事、便座の事、川名の家からうめ

き声の様なものが聞こえたが、それは念仏じゃない

かと思っている事などを話した。

「ああ、やっぱりあの仏像はおかしいわよね。うん念

仏の線はあるかもしれない」

片山は刑事のような口調であった。

「そうそう、それに何だか壁を叩く様な音もしなかった

?」

「あ!しました、しました」

高岡が聞いてきたので洋子は答える。

「この中に川名さんと話した人っているのかしら?」

三井が皆に聞いてきたので、片山、横山、そして洋

子が手を挙げる。

「あ、でも私はただ挨拶しただけよ。洋子ちゃんと横

山さんは何か聞いた?」

「えっと、私は何だか目は虚ろそうだけど、危なそう

な雰囲気は無かったって事と、持ち込んだ便座が

ウォシュレットの1番最初の型って事位ですかね」

「なによ~そのウォシュレットの1番最初のって」

三井が洋子に言うが、洋子自身意味が全く分か

らなかったので、いや話が噛み合わなくってと言

って話しが終わってしまう。

「横山さんは?」

片山が再び仕切ると

「あの、私は便座って見てないんで分からないで

すけど、川名さんに挨拶した時丁度主人が一緒で

、何か仕事の話してたのでもしかしたら・・・」

「え?何だったの?奥さんとかもいらした?」

自分から仕切ったのに片山は、横山が話しを終え

る前に矢継ぎ早に質問する。

「いや、奥さんは居なかったですけど、仕事は内

装業とかって言ってたので、もしかしたら便座って

言うのはそう言う事が関係あるのかなと・・・」

「でも、デザインが良いとか言ってましたよ?」

洋子が言うと

「そうよねぇ、いくら内装業だからって普通は便座な

んて3つも持ち込まないわよ?」

三井が言った。

片山は頷き

「今日になってまだ他の家族に誰も会ってないって

言うのもおかしいし、もし変な宗教だったりしたら大

変な事よ?これは少し観察してみたほうが良いわ

ね」

と言うと皆も頷いているので

「じゃあ、皆でだと怪しまれるだろうから、お隣だし

最初の内は洋子ちゃんそれとなく観察してみてくれ

るかしら」

と洋子を見た。

少しためらう物はあったが、昨日の事もあるので洋

子は引き受ける事にした。

「そうですね、一応皆も眼を配って、また時々こうや

って意見交換出来たら何か分かって来るかもしれな

いですし」

高岡が言うと、では洋子ちゃんが何か新しい事を掴

んだ時点で集まろうと言う事になり、夕食の買い物

があるので解散と言う事になる。

洋子は『片山達に頼まれた』と言う事で責任が分散

され、昨日までより少し隣を伺うと言う事に対しての

罪悪感と言うハードルが低くなったような気がしていた。

さて、ここからがいつもの質問です!

洋子は、明日から隣の川名を観察する為、ある物を購

入します。

何を購入しましょうか?

1 双眼鏡

2 赤外線センサー

3 盗聴器

4 画素数の高い携帯

今回も皆さんの投票で次回の話が変わって行き

ます。

初めての方も、下にあるコメント欄にメールアドレス

、名前、気になった番号を書き、送信を押して投票

して下さい♪

メールアドレスは一般公開はされませんし、僕から

いきなりメールをする事も絶対無いので、気軽に投票

して下さい♪

読んで見て面白いと思ったら、知り合いに紹介してくれ

ちゃっても全然構いま・・・いやっ!宣伝宜しくお願いし

ますっ!!

投票の仕方が分からない方は、こちらで以前説明を書

いたので読んでみて下さい♪

次回はどうなるのでしょう?

次回の展開は皆さんにかかってます!

投票締め切りは、10月5日いっぱいとなります♪

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